2023年の自キ活ふりかえりと自作ケースの話

キーボード #1 Advent Calendar 2023 - Adventarの12/15の記事です。

昨日は大岡俊彦さんの

【薙刀式】カナ配列薙刀式はいいぞという話【キーボードAdvent Calender 2023】: 大岡俊彦の作品置き場

でした。 私も薙刀式ユーザーで日常的に薙刀式でかな入力しています。

2023年のふりかえり

参加したイベント
  • 天キー vol. 4
  • 天キー vol. 5
作ったキーボード
ファームウェア

あらゆるファームウェア薙刀式対応にする活動

  • QMK薙刀式の改良
  • KMK薙刀式をつくった (pythonなんでちょっと書いて試すのが簡単、ただし想像以上に実行速度が遅かった)
  • ZMK薙刀式をつくった (ZMKチョットワカル。薙刀式behaviorつくった)

MABLEをつくった話

MABLEはMiniAxe-like BLE keyboardを短縮して名づけました。 MiniAxeの無線版を作ろうという動機です。 Seeed Studio XIAO nRF52840を使えば、LiPoバッテリーの充電回路がついてるし、GPIOは11pinしかないけどMiniAxeレイアウトなら不足はないし、ファームウェアはKMKやZMKが使えるので、私以外にも同じ構成で左右分割無線キーボードをつくっている例が見つかります。 ZMKのBT実装は技適問題があるらしいので、無線でつなく場合は大人しくKMKを使います。

完全にイベント駆動で天キーvol. 5に向けてつくったのですが、 見栄えのするケースを作ろうと思って試行錯誤した結果、自分でも満足のいくデザインができました。 天キーでもいくつか高評価をいただいただけでなく、 なんと驚くべきことに自作キーボードカレンダー2024(3月の写真)に採用いただきました。 写真は愛車のロードスターの上で撮りました。

ここでは、そのケース設計の試行錯誤の過程をすこし書いてみたいと思います。

コンセプト

私は3Dプリンタ(Original Prusa i3 MK3S+とVORON V0)を持っているので、 PCB以外のプレートやケースは3Dプリンタで作ることが多いです。 PCBを設計してオーダー、PCBを待っている間にケースを設計し、3Dプリンタを動かしている間にファームウェアを書くというフローです。 今回、3Dプリンタらしい、金属削りとは違うデザインにしてみよう、というのが最初の動機でありコンセプトといえます。

最近は恐ろしいことに個人が少量で金属の機械加工をオーダーできる時代になりました。 天キーでも既製品と見分けのつかない自作アルミケースがたくさんありました。 しかし細かくて深い穴がいっぱい空いていて、ほとんど材料をすててしまうような形は、 引き算である削り加工では時間とお金がかかるのでやりたくありません。 そういう形は足し算である3Dプリンタ(additive manufacturing)の得意とするところです。 アルミケースに見劣りしないように、穴だらけのケースをつくろう、という出発点でした。

1st design

ラーメン構造の鉄塔のような形がまずは思い浮かんだので形にしてみました。 プリントしてみると、これはこれで満足感のある形ではあったのですが、 キーボードのケースとしては、あまりかっこよくありません。 寸法調整したり綺麗にプリントできるよう何度か試行錯誤はしたのですが、 やはりカッコよくなかったのは致命的でボツです。

2nd design

次のデザインをどう思いついたのかもはや覚えていませんが、 RAMA WORKSのTHERMALのスリットを意識しつつ、もっと極端にしたらどうなるだろうという感じだったとおもいます。 スリットは貫通していて、向こう側が見えるようにしました。 また、ケースの4方向全部に連続的にスリットを入れたかったので、45度方向にスリットしてみました。

しかしながらプリントしてみると最初の印象はちょっと気持ち悪かったです。 デザインとしては単調だし、やりすぎ感があります。 でも見る向きによって印象が変わるので、 スリット自体は効果的なデザインだなと思いました。

3rd design

次はスリットを部分的にしてみました。 4面全てにスリットをいれつつ、 あまりかっこよくスリットが入らない二つの角の付近はスリットをやめてみました。 スリットのあるところ、ないところの対比がよくて、 このデザインの方向性でいけそう、という感触を得ました。

左右対称の分割キーボードなので、ミラーすれば反対側も自動的にできるのですが、 スリットの方向を左右で同じ方向にしたかったので、 反対側もちゃんとCADモデリングした非対称デザインなのが、 こだわりと言えばこだわりです。

3例挙げましたが、試作としては3回では終わっていなくて、 他の試作品は捨ててしまっただけです。 CADデータをみるとX字にスリットをきったものもありました。 寸法調整やUSB穴の処理、マイコンの蓋など、他にも試行錯誤があります。 3Dプリンタの出力最適化もあります。

また同じデザインでGateron Low Profile版もつくりました。 2, 3週間、週末はこればかりやっていたとおもいます。

最後に

天キーvol.5の後の飲み会で、 ハードをやる人とソフトをやる人が比較的わかれていて、どちらがとっつきやすいという話があったのが興味深かったです。 その人のバックグラウンドによって手を出すところが違うんですね。

私はハード(PCB含めたキーボード設計)もソフト(ファームウェア薙刀式拡張とか)もやるのですが、 もともと親指シフトキーボードを作りたかった、それは物理レイアウトとしての親指シフトキーボードと、 ファームウェア親指シフト入力をエミュレーションする、 という2つを両方ともやりたかったのが、 自作キーボードの始まりだったからでしょうね。

また、普段CAD設計をする仕事をしているのでCAD慣れしていますし、 趣味でプログラムを書くのでファームウェアも敷居が低かったです。 PCB設計は勉強しましたが、foostanさんの本のおかげで失敗なく設計できました。(2018頃の話) 自作キーボードは機械設計、電子設計、ソフトウェアを組み合わせる総合的なホビーであるところが面白いと思っています。

この記事はもちろん自分で設計したキーボードで書きました。 来年もハードソフト両面で楽しんでいきたいと思います。

明日は、あたるの⌨キーボード&技術アカ さんです。 お楽しみに。