キースイッチの研究 1

Romlyさん作の「軸の秤」を購入しました。 これは、キーボードのキースイッチのフォースカーブを測定する装置です。 フォースカーブとはキーを押した時の荷重vs変位曲線で、キースイッチの特徴を表しています。

キースイッチはCherry MX互換だけでもたくさんあって、 しかもバネを変えたり、ルブしたり、カスタマイズしてようやく自分に最適なスイッチになるわけですが、 どうにも感覚的で技術者としては定量化したくなります。

そこで、過去に私もステッピングモーターとロードセルを買ってフォースカーブテスターを作ろうと思ったことがあるのですが、 モーターが動いて、ロードセルで荷重測定できるところまでで頓挫し、 フォースカーブを測定するところまでは辿り着けませんでした。

それと比べたら、軸の秤は本当に完成度が高くて、 初めて計測した時は感動しました。 ファームウェアもよく考えられていて、 市販の測定器みたいです。 ハード的にもHIWINの高級リニアガイド使ってるし、 専用のPCBを起こしていて、 はっきり言って、キーボードを作るより、こっちの方が100倍くらいは難しそうです。

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Romlyさんの「軸の本2」も持っていて、こちらも驚くべきクオリティで、 商業ベースだとあり得ないですよ。 「軸の秤」もなるほどという感じで、Romlyさんの熱意には驚かされます。

さて、組み立てた軸の秤を使って、これまでキースイッチについて疑問に思っていたことを調査していきたいと思います。 とりあえず、デフォルトの設定を使っています。 本当はもっと細かなピッチで測定したいのですが、 そうするとプレス側の測定が終わった後に、リリース側の測定が始まらずに完了してしまうことが多くて、 あきらめました。 ファームウェアの課題だと思いますので、 将来的には解決されるでしょう。

キーがONになるActuation pointも測定したいので、 スイッチをセットして、ソケットから配線を出して軸の秤に接続する台座を作りました。 スイッチの軸にプローブをあてますが、十字型の軸に当てるのは安定しないので、 測定用キーキャップ(0.2〜0.3g、測定にほぼ影響なし)も作ってみました。

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最初に、何度測定しても同じ結果を返すのか、を確認しておきたいと思います。 下は同じスイッチを5回測定して、結果を重ねてみました。 問題はなさそうですね。 これなら、何度も測定して平均化するという作業は不要そうです。 急激に荷重変化するところではばらつきますが、 これは測定ピッチが粗いからでしょう。 ファームウェアの問題が解決したら、ピッチを変えてやり直してみます。

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ここで測定したのはGateron BOX INK V2 Blackというお高いスイッチです。 スペックは以下のようになります。

  • Total travel:3.4±0.4mm
  • Pre-Travel: 1.2±0.3mm
  • Operating pressure: 60±10gf

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軸の秤の測定結果は原点のオフセットを修正すると、 Pre-travel 1.3、Total travel 3.3、Operating pressureは53gfでした。 公差内に入っているので、軸の秤の測定結果は確からしいですね。 十分、スイッチ研究に使えそうです。